敗退の決断

 登山スクールご卒業おめでとうございます。

 さて、最後に1つだけ、教えていなかった重要な事を書かせていただきます。それは、敗退の決断です。よく『退き返す勇気』と言う事がありますが、勇気と言うよりも、途中で退き返すのを決断するのは1つの技術だと思います。

 体調の悪化、悪天候、登山路の崩壊、道迷い等、条件は色々あると思います。それらの様々な状況に直面した時に、的確に退き返すのを決断するのは、難しいですが、これも山登りの重要な技術の一つです。この判断を間違えると、遭難につながる危険な状態になる場合もあります。

 いつも良い天気で、順調な山行ばかりでは、良い勉強にはなりませんが、途中敗退を経験するという事は、とても良い勉強になると思います。そう言った意味では、敗退は負けではありません。なぜ途中敗退をせざるを得なかったのか、原因を考え、それを克服して、次の機会には、ぜひ登頂を果たして欲しいと思います。

 数年前の正月に奥秩父へ行ったのですが、2つ玉低気圧の影響で、一晩で30-50cmも雪が降りました。この時、目的の山の登頂はあきらめ、股までのラッセルをしても下山できる所まで戻ってテントを張りました。この時、無理に登頂していたら、翌日には下山できなかったと思います。

 皆さんも途中敗退の判断を間違える事の無いように、安全登山を心掛け、楽しい山登りをしてください。また、どこかの山でお会いできるのを楽しみにしています。

注)2006年度むさしの登山スクール卒業生に向けた、和名倉山の住人さんからの一言。